高校・専門学校生のための建設企業ガイダンス
ウムヴェルト株式会社 平賀勝秀
当ページは2020年に開催された建築企業ガイダンス(広島産業会館)において、弊社代表が行った高校・専門学校生向けの事業解説を文章にまとめたものです。読みやすくするため、語彙や表現は動画から編集しています。
建築企業ガイダンス 平賀勝秀 講話(2020年)
それでは会社の説明をしたいと思います。
弊社は建設コンサルタント業です。建設コンサルタント業をご存知でしょうか?また他にも非破壊調査業、地質調査業をご存知でしょうか?。今から説明します。
さて、建築・土木の分野には建設業と建設関連業があります。建設業はゼネコンさん……施工屋さんで造る仕事です。そして、建設関連業は調査や設計の考える仕事……おっと、ゼネコンさんも勿論考える仕事ですよ。
全くゼロ無いところ(計画段階)から企業活動を行っているのが建設関連業の仕事です。具体的な仕事としては、建設コンサルタント業、測量業、地質調査、補償コンサルタント……。
補償コンサルタントと言われても分からないですよね。例えば道路がズバーンと計画されます。しかし、建設予定地には家がありますよね。住んでいらっしゃる方が。そして、立ち退いてもわらないと道路ができないでしょう。その立ち退き料であったり、その家を壊したらいくら補償しなければならないかを、我々が役所から仕事を請け、予算等を調査して資料作成します。そんな仕事です。
土木・建築ってどんな仕事?ということで、大きく分けました。
土木は道路、河川、橋梁(きょうりょう)、港湾、砂防……砂防堰堤は河川の上流とかであるでしょう。ダムの様な。そして造成、ビオトープ……これは自然環境、生態系に配慮した仕事です。
砂防堰堤(さぼうえんてい)
「砂防ダム」とも呼ばれる。土砂を河川の上流で受け止め、少しずつ下流に流す施設。土石流による災害を抑えるほか、両岸の山すそを固定することで斜面の崩れを防ぐ働きもある。平成30年7月豪雨(西日本豪雨)を通じて改めて重要性が認識され、各地で建設・整備が進む。
ビオトープ
ドイツ語で「bio(生物) + top(場所)」の意味。環境要素を重視した土木設計のこと。例えば、コンクリートを一面に張ってしまえば、そこに生物が住み着くことはできないが、石積みであれば生物が住める空間が確保できる。土木の全体計画の中で、昔ながらの環境にやさしい工法を採用したり、また、安全性を重視する箇所では最新のコンクリート構造物にしたりと、自然環境とのバランスを考えながら調査・設計を進める。ウムヴェルト株式会社(ドイツ語で環境)の社名はビオトープ=環境がルーツ。
そして建築カテゴリ。建築はビルや一戸建等を建てる仕事です。福祉環境は所謂バリアフリー化。段差を無くしてお年寄りに優しい建物にする等です。あとはインテリア(室内装飾)、エクステリア(外構・庭)、電気工事……これくらいに分類されます。
さて、土木公共物と建築物ができるまでの成り立ちです。まずは国・県・市町村や民間企業(ゼネコン)にやりたいこと(事業)があり、一般競争入札や指名競争入札を通じて仕事をする業者を募ります。これが起案として出てきます。そこに我々、建設コンサルタントが入札を経て、計画・調査・検討……そして申請手続きを行います。
で、ここからが業務の流れの特徴です。例えば県からお仕事を貰いますよね。これを我々がこなして県に納品する。そして、改めて県からゼネコンさんに発注します。その後、施工・完成の流れです。
設計や調査を全てゼネコンさんにお願いしていると思われがちですが、そうではないということです。分離して発注されます。計画から申請手続きまでの仕事は建設コンサルタント業が、施工に関しては施工会社がやってくださいね、と。この仕組みは不正を防ぐ為です。計画から施工まで1社が担当すると、数値やコストの改ざんができてしまいますから。
我々の業界は似通っていて、しかし少し違うということです。事業に対しては複数の企業がチームワークで対応しますが、お金の出どころは意図して分けられている……ということを覚えておいてください。
そして、施工後に問題になるのが、公共物や建物を維持していくことが必要であり管理・点検・修繕が発生します。現代では施工後50年を経過したトンネルや橋などが多くありますが、それらを維持・管理する仕事が沢山増えています。
建設コンサルタントの仕事をもう少し詳しく説明します。まずは「点検」。道路、橋梁、港湾、砂防設備、河川と、これら既存の設備に対して個々に点検業務を行います。我々の仕事は点検の結果を調査票にまとめ役所に納品するまで。その後は役所から施工会社に補修工事が発注されます。これも分離発注ですね。次に調査。測量、地質、水質、補償物件、地中探査、災害復旧、3Dドローン測量、GPS測量等に関する調査等です。
写真は地中探査の様子です。これは空洞探査と言いまして、護岸の下に空洞が無いか調べています。3Dはこちらの機械です。三次元スキャナーといいまして、レーザー光線で撮影した地形を三次元データとして図面化します。
UAVはドローンのことです。ドローンによる撮影も三次元化データ化して測量に使います。
GPS観測(GNSS観測)はスマートフォンでお馴染みの機能ですね。これら衛星による位置情報も測量に使われます。
そして、調査を元に設計。道路、河川、構造、橋梁、補修、法面、造成、災害復旧、砂防設備など調査種類に応じて図面上に設計します。これら一連が建設コンサルタントの業務の流れです。建設コンサルタントとは、「建設前調査設計業」と考えると分かりやすいです。
これらは点検業務です。(1)(2)は弊社による橋梁点検の様子で、(4)はトンネル点検です。そして(3)は人間が釣られていますね。これはロープアクセスと言いまして、橋梁点検で車両が入れない場所で行う仕事です。
ロープアクセスはテレビで紹介されることもあり、若い世代がこの分野にかなり進出しています。瀬戸大橋なんかも人が釣られて点検していますからね。あ、ウチに入社してこれをやってください、というわけではありませんよ!この仕事は専門性が高く、専属のスタッフに任せます。
さて、「職選びの不安な点それは……」ということなんですけれども、学生の皆さんは不安になっていますよね。
「この仕事は将来もちゃんと食べて行けるのか?」という不安。皆さんのお父さんお母さんもすごく心配しているかと思います。また、AIの進化で仕事を奪われるのではないか……そんな心配もあると思いますが、そんなことはないんです。
私(平賀)がこの業界に入ったのは24歳の頃なので、今から25-26年前です(1994-1995年頃)。当時は業界の景気が結構ピークだったんですよ。仕事が沢山あって、それから落ちていった時代なんですね。そして、無駄な公共事業は減らそうじゃないかという流れになりました。無駄な公共工事は、減らさないといけないことは、当然ですし賛成です。しかし、必要な公共事業も一緒に減らされた時代でした。その時に多くの人材が転職したり、業界へ魅力を感じないないと去っていきました。仕事がなくなるわけですからね。給料も下がりますし。ともあれ、そんな中でも弊社はこの業界に希望をもって将来を信じて続けてきました。
ところで、毎年台風が来ますよね。昨今はちょっと普通じゃない台風でしょう。インフラもどんどん壊れたりして……今ですね、すごく仕事が増えてるんです。ここ10年くらいの話です。
この業界、どこに行っても景気良いですよ。給与も上がっています。そして(バブル崩壊で業界が縮小したため)人材が少ないんです。これは1年2年の話ではなく、多分10年20年掛かっても、まだ人材不足ではないかと言われています。そして、人が少ないところに行けばチャンスはあるんです。
だって、もうありますから!仕事が。仕事があっても人が多い業界……例えばインターネットやIT関連は競争率も激しいですし、自分がやりたいことが、もしかしたらできない可能性もあります。
そんな過度な競争の業界でなく、皆さん(学生の聴講者)はせっかく土木や建築を勉強していますから、もし興味があるならこの業界をやった方が良いと思います。必要とされる人が居ないのですから、給料は上がりますよね。そして、この業界はAIやロボットが驚異にならないので、将来性もかなりの仕事があると思います。
ということで話が前後しましたけど。
(1)建設の大前提ですね。計画と調査と設計。これは、絶対に必要です。無くならないんです。これを我々の業界、建設コンサルタントがやっているんです。
(2)老朽化する公共物ですね、橋とかトンネルとか河川等。「維持に生活は不可欠」って書いてますけど、本当なんです。不可欠なんです。これがあるから生活が成り立つんです。これがひとつ壊れるとまた新しく造らないといけないし、その時、被災して亡くなられる方も出てくるかもしれませんし、ここはやはり未然に防ぐ。老朽化の維持管理は不可欠なので、仕事も沢山増えてます。
(3)で、万が一崩落した時の事故ですね。起きれば莫大な補償や責任問題が発生すると、河川がひとつ壊れたら、そこに住まわれている方々への補償の方が高いんです。人が亡くなるんですから、家も全部なくなってしまうんです。そうではなく未然に防ぐ、災害に強い国を作ろうじゃないかと、いうことで今、国も県も市も力を入れています。
(4)国と自治体は点検補修を業者に発注する責任がある、と。まあ、使命がありますよね。やっぱりね、ここの発注はすごく増えてます。
(5)で、AIだけではできない仕事。ドローンによる空撮測量は業務の一部に過ぎないですし、これは、アイテムですから。アイテム(3Dスキャナーを指さしながら)。このアイテムを仕事の為に使うと。君たち自身が業界に入ったときは、これらの活用を考えて仕事してもらいたいと思います。
で、この仕事はちゃんと食べれるだけじゃないんです。
災害ありましたよね。平成30年(平成30年7月豪雨 西日本豪雨)……被災された方はいらっしゃいますか?東広島……ああ、そう。弊社も東広島市様から要請を頂き沢山請けました。県の東広島支所様からも請けてますので。全県200ヵ所くらいありましたけど、凄く被災してました。
私の出身が呉(くれ)なんですけど。もう呉は、凄く被災してましたから。ここ(スライド)に書いてあることは、消防とか警察とか自衛隊も含めてね、同時期ぐらいに仕事をしてます。なおかつ、私たちの方が仕掛りが早い時もあります。
あの災害(西日本豪雨)の時、本社が心配なので戻ったら、役所から電話が鳴りっぱなしでした。「あそこの調査に行ってくれ」「あの辺がどうなってるか分からん」まだ全然、警察も消防も来ていないような場所に行って調査します。でも、危ないことはしません。経験がありますから命を落とすようなことはね。
ということで、社会貢献できる仕事を使命感を持ってできます。世の中のお役に立たせて頂く仕事ができます。県の職員さん、市の職員の皆さん、町の職員の皆さん……チームワークで一緒に仕事をしましたので。それだけ大きい災害でした。でも、これはたぶん、去年もそうでしたが、別のところでも災害が起きてるでしょう、県外で毎年起きてますよね。今後も県市町の職員さんとは一緒に仕事をすると思います。
これはSDGS(エスディージーズ)とありまして、ちょっと余談なんですが。国連が推奨している取り組みで、2030年までに世界の企業が自分の目標を立てて、そこでより良い社会いづくりに貢献しながら仕事していきましょう!と言うことなんですけど、弊社も広島県に申請したら、取得できました。
これは平和公園の広島国際会議場ですね。授賞式にも参加させて頂きました。
先程も言いましたが「今後も需要がありAIの発達に侵食されない」これは、絶対です。AIを使っていく人材が欲しいんです。
「インフラ維持、災害対応で社会に貢献」ということで、これはもう凄く仕事が増えています。国自体がやらないといけないので。
そして弊社のことも一応、説明致します。昭和57年創業なので38年目です。弊社に入ってもらえれば、地元密着なので転勤はありません。東京や福岡にも支店を出していますけど、東京は今からちょっと色々なことをやりたいなと思っているのですが、そこは地元の人を雇おうかなと。ここ(建設企業ガイダンスの参加学生)だけの話だけでなく、弊社の社員のみんなの方針としてですね。
「中小ならではの、仕事を自分の手に握るような実感」ということで、色々なことができますよ、と。専門だけじゃなく、ドローンを使ったりだとか、設計だったりとか、とにかくウチの会社は全員でチームワークでやっている会社です。
まあとにかくですね。皆さんも就職活動が、大変かもしれませんが、自分の将来は自分でしか決められませんから。自分を信じ切って、自分を信じ切ることが大切ですからね。家族に色々相談して就職活動を頑張ってください。ありがとうございました。
さらに測量・設計分野について知りたい方は
下記のリンクから紹介動画をご覧ください(外部サイト)。
UMWELT.(ウムヴェルト)とは、ドイツ語で『環境』を意味します。あらゆる自然環境と社会貢献につながる豊かな社会を築きあげ、世の中にお役立てすることを目的に企業活動を行います。
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